2024.01.26
転移性の耳下腺腫瘍に対するベストの術式は全摘術?
皮膚扁平上皮癌または悪性黒色腫では耳下腺領域においてリンパ節に転移を来しやすく、転移があると、一般的に耳下腺切除術が検討されます※。
米国メイヨークリニック医科大学のOlsen博士らは、皮膚扁平上皮癌42名と悪性黒色腫23名で耳下腺腫瘍に対する切除術を行った患者さんを対象に検討を行ったところ、皮膚扁平上皮癌における5年局所制御率(再発などが起こらない率)は、深葉転移のない例で93%、ある例では89%であり、深葉転移のない例はある例にくらべ無病生存期間など予後も良好でした(悪性黒色腫については不明でした)。
この結果からOlsen博士らは、耳下腺領域でも深葉への転移があると予後不良になりやすいと考え、耳下腺切除の術式としては、顔面神経の切除までを伴う耳下腺全摘除術が望ましいと述べています。
※:耳下腺とは耳の前下方にある唾液腺(唾液をつくる臓器)の一つで、ここにできる腫瘍を耳下腺腫瘍と呼びます。耳下腺内には顔面神経が貫いており、顔面神経の外側を浅葉、内側を深葉と呼び、深葉に及ぶ手術は顔面神経障害のリスクが高くなります。耳下腺腫瘍の手術では、腫瘍の大きさと悪性度を考慮しながら、顔面神経を含めどこまで切除を行うかが問題となります。
(文責:株式会社プロウェーブ《prowave.co.jp》)