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突発性難聴

突発性難聴は、片側の耳におこる難聴の中でもっとも頻度の高い難聴です。治療を受けている人の数は、2001年の調査において人口10万人あたり27.5人1)2)、2012年の調査では60.9人3)と推定されています。原因は不明であり、早期の診断・治療が重要となります。

突発性難聴の症状

突発性難聴は片側の耳に突然発症した原因不明の難聴で、診断基準においては「文字どおり即時的な難聴、または、朝、目が覚めて気づくような難聴」と定められています。前日はまったく何ともなかったのに、朝起きてテレビをつけたら聞こえづらくなっているなど、突然起こるのが特徴です。

幅広い年代で起こる難聴ですが、とくに60歳代で多くみられ、男女差はありません4)。難聴の程度については軽症から重症までさまざまですが、軽症の場合には難聴に気づかず、耳鳴りや耳がつまった感じなど、何らかの耳の症状を自覚することが多いようです。また、めまいを伴うこともあります。

突発性難聴についてはこれまで数多くの研究が行われ、循環障害(血液の流れが悪くなること)やウイルス感染、自己免疫などが関係しているのではないかと推定されていますが、原因は特定されていません。それにより、突発性難聴をターゲットとした治療法の確立はいたっていません。ただ、発症から2週間以上経過して治療を行った場合は、難聴の症状が改善しづらくなると言われており、早期に医療機関を受診することが重要となります。

突発性難聴

突発性難聴の特徴

  • 突然の発症
  • 高度の感音難聴(音をうまく感じ取れない難聴)
  • 原因が不明

文字どおり即時的な難聴、または、朝、目が覚めて気づくような難聴。ときに数日かけて悪化する場合もある。片側の耳に起こることがほとんどだが、まれに両側の耳起こる場合もある。難聴の発生と前後して、耳鳴りやめまい、吐き気などの症状を伴うこともある。難聴が改善したり、悪化したりを繰り返すといった症状の波はない。

突発性難聴と診断するための検査

突発性難聴と診断するためには、まずは問診を行い、発症した時期や状況を確認します。そして鼓膜の状態をチェックし、難聴の程度について調べるための聴覚検査を行います。ほかにも、ウイルス感染の有無を調べるための血液検査や、脳の病気による聴力低下を調べるためのMRIを行ったりすることがあります。これらの検査をもって、他の病気が原因の難聴であることが除外された場合に、突発性難聴として診断されます。

また、突発性難聴にめまいを伴うと重症化しやすく、かつ症状が改善しづらいとされているため、めまいの有無を確認するための検査もあわせて行います。

突発性難聴の治療

突発性難聴に対する治療法として、現状では、原因と推定されている循環障害やウイルス感染に対する効果を期待し、ステロイド剤の投与が行われています。わが国の突発性難聴に関する状況を調べた調査研究においても、患者さんの90%以上でステロイド剤の投与が行われており4)、実質的な標準治療となっているといえます。

また、突発性難聴の症状に対する効果を期待して、血管拡張薬、代謝改善薬、ビタミン製剤などが併用される場合もあります。 なお、ステロイド剤は経口や点滴で投与されることが中心ですが、糖尿病などの病気を持っていてステロイドが投与できないなど、副作用が懸念されるような場合には、鼓膜の内側にステロイドを注入する『鼓室内投与』という方法もあります。

ほかにも、突発性難聴の原因と推定される循環障害に対し、血液中の酸素を増やし循環を改善する目的で高圧酸素療法(HBOT)という治療が用いられることもありますが、その効果についてはさまざまな結果があり一定の見解は得られていません。

すみやかな治療が重要

ひとくちに突発性難聴といってもその程度はさまざまで、多少、聞こえづらさがあっても日常会話に必要な音が聞き取れている場合、そのまま問題視せずに過ごしてしまうこともあるようです。

ただ、難聴や耳鳴りが改善されずに残ってしまうと、やがてさまざまな心理的、身体的な負担を伴い、患者さんの日常生活に大きな支障を及ぼすようになります。そのため、突発性難聴を発症した場合は、早期に医療機関を受診し、症状にあった適切な治療を行うことが重要となります。

突発性難聴の治療については、一般的に発症から2週間以内に行うことが推奨されており、治療開始が遅れるほど症状の改善がみこめなくなると懸念されます。適切な治療により完治をめざすためにも、「聞こえ方がおかしいかな?」と感じたら、早めに当クリニックにご相談ください。

1) 中島務、冨永光雄、イエーダマリアイシダ、他. Audiology Japan.2004;47:109-18
2) 寺西正明、片山直美、内田育恵、他. Otology Japan.2007;17:621-26
3) Nakashima T, Sato H, Gyo K, et al. Acta Otolaringol.2014;134:1158-63
4) Kitoh R, Nishio SY, Ogawa K, et al. Acta Otolaryngol.2017;137(Suppl565):S8-16

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